世界で初めてのヘモグロビン・サーモダイナミックス (4)

書き換えた"世界で初めてのヘモグロビン・サーモダイナミックス(4)"

分配係数の対数 logP について

オクタノール(org)と純水(aq)との間における溶質の分配比を分配係数(P)とします。
P = Porg/Paqです。logPはその対数です。

logP = log(Porg/Paq) 分配比が等しい時に logP = log 1 = 0 になります。
溶質の水との親和力が大きくなるとlogPの値は負の値になります。

logP = log(small/large) < 0

分配係数の対数とギブスエネルギー値

ある溶質の有機層(org層)におけるギブスエネルギー値と、
その溶質の水層(aq層)におけるギブスエネルギー値の差をΔrG₀とすると、
ΔrG₀とlogPとの間には次の等式が成立します。

ΔrG₀ =rG₀(org)ーrG₀(aq) = ーRTlnP = ー2.3 RT logP

(私の頭の中では式 P=exp{ーΔrG₀ /RT} の方が理解しやすいくなっています。)pHの変動に応じた溶質のΔrG₀の変動を評価することが出来ます。

溶液のpH値と溶質のpKa値とギブスエネルギー値変化の総和

斯かる場合には、溶質のpKa値が重要な意味を持ちます。
溶質が両性イオンである時には、
等電点(pI)のpH値をpKa値として用います。(以下同じ。)

複数の物質が関与する化学変化における、
ギブスエネルギー値変化の総和であるΔrG₀totalの変動を、
評価することも出来ます。

ただし、このΔrG₀は水層中の溶質のギブスエネルギー値を直接表すものではなく、
溶質とaqの他にorgの存在を前提とする値なのです。

それでも水層中の溶質のギブスエネルギー値が反映された値であり、
水層中の溶質のギブスエネルギー値と無関係ではありません。

このΔrG₀は水溶液中の溶質のギブスエネルギー値と密接に関連した値であるから、
水層中の溶質のギブスエネルギー値変化の相対的な評価をすることが出来ます。
(後には絶対的な評価をすることができます。)

酸素分子が体の組織の末端に届けられることについては、
当該相対的な評価を理解することで足ります。

純水に酸または塩基を加えると溶質と水との親和力に変動が生じます。
今論じているのは両性イオンであるからpKa値は等電点(pI)のpH値になります。
pKa値(pI)を有する両性イオンである溶質のlogP値及びΔrG₀は、
次の式で与えられます。

logP = logP₀ー| pKa ー pH |                 
ΔrG₀ = ー2.3 RT ( logP₀ ー| pKa ー pH | )          

aq層のpH値が両性イオンである溶質のpKa値と同じになった時の、
その両性イオンである溶質のlogP値がlogP₀値になります。


グラフから分かるようにその両性イオンである溶質のlogP₀値は、
その両性イオンである溶質のlogP値の最大値になります。
下記fig-1は上記の理解を容易にします。

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