世界で初めてのヘモグロビン・サーモダイナミックス (7)

分配係数とボルツマン分布

ヘモグロビン・サーモダイナミックスを理解する上での熱力学的な基礎知識

気体の内部エネルギーの変化(ΔE = ΔU)と,
エネルギー順位の占有確率の比( N₁/N₂)とのボルツマン分布則

定量的には、温度Tにおいて二つのエネルギー順位 E₁、E₂の占有確率の比 N₂/N₁はボルツマン分布則に従います。
 N₁/N₂ = exp(ーΔE/kB T)

ここで、
N₁とN₂とはそれぞれ E₁とE₂との分子の占有確率 (確率の総和は1。)、
ΔE = E₂ー E₁、
kB = 1.381×10 ^⁻23 j/Kはボルツマン定数です。

両辺の自然対数をとると、ln( N₁/N₂) = ーΔE/kB T
ΔE = ーkB T ln( N₁/N₂) となります。

上式の両辺にNA(アボガドロ定数)を乗じたものは1モル当たりの内部エネルギーの変化(ΔE₀)です。
ΔE₀ = ーRT ln( N₁/N₂) (NAΔE = ΔE₀ 、NA kB = R )

この式は気体の内部エネルギー順位の差(ΔE = ΔU)と,
 各エネルギー順位の占有確率の比( N₁/N₂)との関係を表したものです。

org層とaq層とに間における溶質のギブスエネルギー値との差(ΔrG)と、
org層とaq層との間における溶質の分配係数(P = Porg/Paq)とに関するボルツマン分布則

(ΔrG)と(P = Porg/Paq)との関係は、
ボルツマン分布則に従います。

P = Porg/Paq = exp(ーΔrG/kB T)
ln(Porg/Paq) = ーΔrG/kB T
ΔrG = ー kB T ln(Porg/Paq) = ー kB T lnP 

ΔrGはorg層とaq層とに間における溶質のギブスエネルギー値との差、
P = Porg/Paqはorg層とaq層との間における溶質の分配係数、
kB = 1.381×10 ^⁻23 j/Kはボルツマン定数なのです。

ΔrG₀ = NAΔrG = -NA kB T lnP = -RT lnP
ΔrG₀ = -RT lnP = - 2.3 RT logPとなります。

NAはアボガドロ定数です、
ΔrG₀は1モル当たりのギブスエネルギー値の変化。