世界で初めてのヘモグロビン・サーモダイナミックス (9)

駆動力は宇宙全体のエントロピーの増大

ギブスエネルギーについての説明

系のギブスエネルギー変化が負の値になるので、
その系の変化は自発過程になるという表現を何度かしています、

ギブスエネルギーについて説明をすることが、
必要になっていると感じているのでその説明をしておくことにします。

エントロピーについての説明

ギブスエネルギーについての説明に先立って、
エントロピーについての説明が必要なのです。

この世の中には物質の性質として二種類のものがある事になっています。

一つは示量性(extensive property)で,
もう一つは示強性(intensive property)なのです。

物質の量に依存する性質の事を示量性があるといい。
物質の量に依存しない性質のことを示強性があるといいます。

質量、体積、面積、エネルギー、電荷などは示量性があり、
温度や密度は示強性があります。

この世の中の出来事等は確率を持って論じられることが多いいけれど、
その確率はそれ自身では上記のいずれにも属していません。

ボルツマンさんはその確率を示量性を持った数値に変換する ことに成功しました。
その変換した数値とボルツマン定数との積がエントロピー(S)です。
ボルツマン定数はその変換した数値とエネルギーとを関連ずける適切な値です。

あなたも知っているようにエントロピー(S)は確率ではありませんが、
それでも確率とエントロピー(S)とは密接に関連しています。

その系の存在する状態の確率が高い値になると、
その系のエントロピー(S)が上昇すると言う相関があります。

そんなわけでその確率について判断することで、
エントロピー(S)に対する相対的判断をする事が出来ます。

確率等の統計的な手法によって導いたエントロピー(S)の他に、
熱量から導いたエントロピー(S)があります。

両者が一致するように前者において適切な(ボルツマン)定数を定めています。

熱量から導いたエントロピー(S)とは、
熱量を絶対温度で除した値なのです。

温度の異なる二つの物体を接触させてみると、

高温の物体がある熱量を失い、
低温の物体が同じ熱量を得て両者が等しい温度にります。

前者 (高温であるから分母が大きい) のエントロピー(S)の減少 (熱量aを失い) よりも、
後者 (低温であるから分母が小さい) のエントロピー(S)の増加 (熱量aを得て) のほうが大きいので、

全体としてはエントロピー(S)は増加しています。ΔS=a/smaller-a/larger>0

この様に自発的な現象によって定まる状態のエントロピー(S)は必ず増大します。
ここで自発的な現象であることに重要な意義があることを強調しておきます。

自発的な現象が生じることは何らかの駆動力が働いているのです。
その駆動力を宇宙全体(universe)のエントロピー(S)の増大に求めるとする考え方なのです。

この事は汎用性のある法則である熱力学第二法則として次の式で表されています。
ΔSuniv = ΔSsys + ΔSsurr ≧ 0

宇宙全体(universe)のエントロピー(S)の値は自発過程とともに増大します。
systemは系内を、surroundingは系の周囲の環境を表し、等号は可逆過程でのみ成立します。

いつも宇宙を相手に問題を解決しているとそれは私の人生をより良く改善していますが、
いつも宇宙全体についての計算をするのは、大変な事なので何とかしたいと思っています。