世界で初めてのヘモグロビン・サーモダイナミックス (8)


溶質のギブスエネルギーについての補足説明
 
標準モル生成ギブスエネルギー値

1bar ( 0.987 atm ) 大気中 298°K ( 25℃ )における、
化学物質の標準モル生成ギブスエネルギー値を計算して定めています。

一般に化学反応の前後において化学物質のギブスエネルギー値は変動します。
私は溶媒和を化学反応の一種であると捉えて次のように考えます。

溶質である化学物質のギブスエネルギー値

良溶媒和を受けた溶質である化学物質のギブスエネルギー値は低下します。
貧溶媒和を受けた溶質である化学物質のギブスエネルギー値は上昇します。
同じ溶質である化学物質でも異なるギブスエネルギー値を有することになります。

分配という事に思いを巡らせると、
異なるギブスエネルギー値を有することになる同一の溶質である化学物質の、
異なるギブスエネルギー値の差にのみ注目すれば良いことになります。

差をとるという引き算をする過程で、
溶質である化学物質の標準モル生成ギブスエネルギー値は相殺されてしまうので、

固有の値としての溶質である化学物質の標準モル生成ギブスエネルギー値を、
知る必要はないからです。

ボルツマン分布則

そしてその注目する異なるギブスエネルギー値の差(ΔrG)と、
溶質である化学物質の分配係数(P = Porg/Paq)とは、
ボルツマン分布則に従います。

org層とaq層とに間における溶質のギブスエネルギー値との差(ΔrG)と、
org層とaq層との間における溶質の分配係数(P = Porg/Paq)とはボルツマン分布則に従います。

P = Porg/Paq = exp(-ΔrG/kB T)
ln(Porg/Paq) = -ΔrG/kB T
ΔrG = - kB T ln(Porg/Paq) = - kB T lnP 

ΔrGはorg層とaq層とに間における溶質のギブスエネルギー値との差
P = Porg/Paqはorg層とaq層との間における溶質の分配係数、
kB = 1.381×10 ^⁻23 j/Kはボルツマン定数です。

ΔrG₀ = NAΔrG = -NA kB T lnP = -RT lnP
ΔrG₀ = -RT lnP = - 2.3 RT logPとなるの。

ΔrG₀は1モル当たりのギブスエネルギー値の変化、
NAはアボガドロ定数です。