世界で初めてのヘモグロビン・サーモダイナミックス (5)

書き換えた"世界で初めてのヘモグロビン・サーモダイナミックス(5)"

(2)オキシヘモグロビンAから(3)デオキシヘモグロビンFへの酸素分子の移動
Aはお母さんを含む大人(Adult)を意味し、Fは胎児(Fetus)を意味します。

お母さんから胎児への酸素分子の移動が自発過程であることについて説明します。

人の血液のpHは6.8~7.8、
(4)デオキシヘモグロビンAのpKaは8.2、
(2)オキシヘモグロビンAのpKaは6.96、
(1)logP₀と(2)logP₀または(3)logP₀と(4)logP₀は近似するものと想定します。

お母さんから胎児に酸素分子が移動する際、
(2)オキシヘモグロビンAと(3)デオキシヘモグロビンFとから
(4)デオキシヘモグロビンAと(1)オキシヘモグロビンFとを生じます。

そして、その酸素分子が移動する際に生ずるギブスエネルギー変化(⊿G)の総和(ΔrG₀total )が負の値になることを説明します。
⊿G=ーRTlnP=ー2.3RTlogPであるからlogPについて論じることで⊿Gについての判断が可能となります。

ΔrG₀total = ー2.3RT[{(3) logPー(1)logP }+{(2) logPー(4)logP }] = 2.3RT[{(1) logPー(3)logP }+{(4) logPー(2)logP }]< 0

ΔrG₀total = 2.3RT[{(1) logPー(3)logP }+{(4) logPー(2)logP }]< 0
(1)pKa以下のpH領域及び(4)pKa以上のpH領域を除く、全てのpH領域でΔrG₀total 値変化の総和 が負の値です。

ΔrG₀total =  ー2.3RT[{(3) logPー(1)logP }+{(2) logPー(4)logP }] =2.3RT[{(1) logPー(3)logP }+{(4) logPー(2)logP }]= 0
(1)pKa以下のpH領域及び(4)pKa以上のpH領域でΔrG₀total 値変化の総和 が零(0)です。

pH値変化と(1)~(4)logP値変化との関係はfig-2から読み取ることが出来ます。
pH値変化と[logP値変化の総和 X (ー1)]=[{(1) logPー(3)logP }+{(4) logPー(2)logP }]との関係はfig-3から読み取ることが出来ます。

(1)pKa以下のpH領域及び(4)pKa以上のpH領域を除く全てのpH領域

(2)オキシヘモグロビンAから(3)デオキシヘモグロビンFへ酸素分子が移動する際、
(1)pKa以下のpH領域及び(4)pKa以上のpH領域を除く全てのpH領域内で[logP値変化の総和 X (ー1)]=[{(1) logPー(3)logP }+{(4) logPー(2)logP }]が負であるから、
ΔrG₀変化の総和 は負となります。 

ΔrG₀total = ー2.3RT[{(3) logPー(1)logP }+{(2) logPー(4)logP }] =2.3RT[{(1) logPー(3)logP }+{(4) logPー(2)logP }]< 0

このことは当該水溶液中の酸素分子が移動する際における、
溶質のギブスエネルギー値変化の総和が負の値となる事を類推出来ることを意味します。

(1)pKa以下のpH領域及び(4)pKa以上のpH領域を除く、全てのpH領域でΔrG₀total 値変化の総和 が負なので、
水溶液中における溶質のギブスエネルギー値変化の総和(ΔrG₀aqtotal<0)も負になります。

(1)pKa~(2)pKaにおいてΔΔrG₀total <0 です。 この時のΔΔrG₀aqtotalも異なる絶対値において負の値になります。
(2)pKa~(3)pKaにおいてΔΔrG₀total =0 です。 この時のΔΔrG₀aqtotalも零(0)になります。
(3)pKa~(4)pKaにおいてΔΔrG₀total >0 です。 この時のΔΔrG₀aqtotalも異なる絶対値において正の値になります。

ここで水層のpH値が変動する際の溶質のギブスエネルギー値の変動についてもう少し検討します。
溶質とイオン化した溶質とでは水層中で示す性質と、有機層中で示す性質には大きな違いがあります。
イオン化した溶質は水層中で強く良溶媒和を受けてギブスエネルギー値の低下に貢献します。
イオン化した溶質は有機層中で強く貧溶媒和を受けてギブスエネルギー値の上昇に貢献します。
イオン化した溶質の両層に於けるギブスエネルギー値の差は、溶媒和の相違により非常に大きくなります。

ボルツマン分布から有機層に移動するイオン化した溶質の量(分子の数)は非常に小さくなり、実質的には零になります。
そのことはイオン化した溶質は有機層でのギブスエネルギー値の上昇に貢献できない事を意味します。
即ち、水層でpH値が変動しても実質的に有機層での溶質のギブスエネルギー値に変動を齎(もたら)すことがないことを意味します。
有機層中での溶媒和に変動がないからです。 ΔrG₀orgtotal=0    ΔΔrG₀orgtotal=0
結果として、水層のpH値が変動する際の水層と有機層とに於ける溶質のギブスエネルギー値の差の変動は、
全てが水層に於ける溶質のギブスエネルギー値の変動に起因することになります。
水層中での良溶媒和には大きな変動が生じているからだす。

そうするとΔrG₀total = ΔrG₀orgtotal + ΔrG₀aqtotal = ΔrG₀aqtotal   
ΔrG₀total = ΔrG₀aqtotal  となります。  
 fig-3中に於いて 黒色の実線で表したΔrG₀total を見て下さい。
ΔΔrG₀total はpH値の上昇に伴うΔrG₀total の傾きになります。
(1)pKa~(2)pKaにおいてΔΔrG₀total <0 です。 この時のΔΔrG₀aqtotalも同じ絶対値において負の値になります。
(2)pKa~(3)pKaにおいてΔΔrG₀total =0 です。 この時のΔΔrG₀aqtotalも零(0)になります。
(3)pKa~(4)pKaにおいてΔΔrG₀total >0 です。 この時のΔΔrG₀aqtotalも同じ絶対値において正の値になります。

logP値は水層と有機層との存在を前提に示される数値であるにも拘らず、
水層のpH値が変動する際のギブスエネルギー値の差の変動は実質的に全て、
水層でのギブスエネルギー値の変動に帰することになります。
そのことは血液中でのヘモグロビンの熱力学的考察には好都合となりました。

(2)オキシヘモグロビンAと(3)デオキシヘモグロビンFとから(4)デオキシヘモグロビンAと(1)オキシヘモグロビンFとを生じる際の化学反応に基づくギブスエネルギー値の変化の総和

(2)オキシヘモグロビンAと(3)デオキシヘモグロビンFとから
(4)デオキシヘモグロビンAと(1)オキシヘモグロビンFとを生じる際の、

酸素分子の移動を伴う化学反応に基づくギブスエネルギー値の変化の総和は、事実上相殺関係にあることから考慮しないものとしました。

(2)オキシヘモグロビンAから(3)デオキシヘモグロビンFへの酸素分子の移動

pH値の変動に基づく、当該酸素分子が移動する際の出発物質と生成物のギブスエネルギー値の変化を考慮の対象としました。

(2)オキシヘモグロビンAから(3)デオキシヘモグロビンFへの酸素分子の移動は、
(1)pKa以下のpH領域及び(4)pKa以上のpH領域を除く、

全てのpH領域で自発的に進行する過程(自発過程)であります。
即ち人の血液のpH領域内では常に自発過程となることを説明しました。

(1)pKa以下のpH領域及び(4)pKa以上のpH領域

(1)pKa以下のpH領域及び(4)pKa以上のpH領域では化学平衡が成立します。

(1)pKa以下のpH領域及び(4)pKa以上のpH領域では[logP値変化の総和 X (ー1)]=[{(1) logPー(3)logP }+{(4) logPー(2)logP }]が零(0)であるから、
ΔrG₀total 値変化の総和 も零(0)になります。
ΔrG₀total 値変化の総和 が零(0)なので、水溶液中における溶質のギブスエネルギー値変化の総和(ΔrG₀aqtotal)も零(0)になります。

ΔrG₀total = ー2.3RT[{(3) logPー(1)logP }+{(2) logPー(4)logP }] =2.3RT[{(1) logPー(3)logP }+{(4) logPー(2)logP }]= 0
(1)pKa以下のpH領域及び(4)pKa以上のpH領域でΔrG₀aqtotal 値変化の総和 も零(0)です。

(1)pKa以下のpH領域及び(4)pKa以上のpH領域でも、
(2)オキシヘモグロビンAと(1)オキシヘモグロビンFとの濃度が等しくなるまでは、
(2)オキシヘモグロビンAから(3)デオキシヘモグロビンFへ酸素分子が移動する可能性があります。

しかし、(1)pKa以下のpH領域及び(4)pKa以上のpH領域は、
人の血液のpH領域以外のpH領域なのでこれ以上の議論をする必要はありません。



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