世界で初めてのヘモグロビン・サーモダイナミックス (3)


大人のヘモグロビン{(4)デオキシヘモグロビンA}

(4)デオキシヘモグロビンAは四つのヘム機構(以下、ヘムと言う。)からなる分子です。

各ヘムは充分に離れているけれど相互に情報を交換することによって、
ヘモグロビンは協同性を発揮する為の伝達機構を持っていることが知られています。

ヘモグロビンの協同性については、
世界で初めてのヘモグロビン・サーモダイナミックス (11)をご覧いただき、
私の意見を知っていただければと思います。

ポルフィリン環

(2)オキシヘモグロビンA中の第一鉄イオンはヘムのポルフィリン環面に程よく納まり、
ポルフィリン環面は平面になります。

(4)デオキシヘモグロビンA中の第一鉄イオンはポルフィリン環面に程よく納まらないので、
ポルフィリン環面は平面になれません。

酸素分子が配位結合した第一鉄イオンは低スピン型となって小さくなり、
酸素分子が配位していない第一鉄イオンは高スピン型となって大きくなっています。

一つのヘムにおける平面性についての情報は同一の(4)デオキシヘモグロビンA分子内の他のヘムに伝達され、
酸素分子の脱着を同一方向へと促進することによって協同性を発揮します。

(2)オキシへモグロビンA中の第一鉄イオンは八面体の中心に位置します。

(4)デオキシヘモグロビンA中の第一鉄イオンはポルフィリン環面
の内 (酸素分子が配位結合する側の反対) 側に位置します。

ペーハー値の変動

人体において肺の肺胞の毛細血管内は相対的に塩基性で、
体の末端組織の毛細血管内は相対的に酸性です。

人の血液は中性の値を含む領域でおよそペーハー値の幅が一点零位の範囲内にあります。

その範囲内のペーハー値の変動では、
(2)オキシヘモグロビンAのエネルギーのは 酸性では高く、塩基性では低くなります。

(4)デオキシヘモグロビンAのエネルギーは酸性では低く、塩基性では高くなります。

(2)オキシヘモグロビンAは塩基性となっている肺胞においてエネルギーが
低い安定な状態となります。

だから相対的にエネルギーが高い状態にある、
(4)デオキシヘモグロビンAが肺胞において(2)オキシヘモグロビンAになります。

そして酸性となっている末端組織において(2)オキシヘモグロビンAは
エネルギーが高い不安定な状態となります。

(4)デオキシヘモグロビンAはエネルギーが低い状態にあるから、
(2)オキシヘモグロビンAは酸素分子を放出して安定な(4)デオキシヘモグロビンAになります。

ミオグロビン

更にそこにはミオグロビン(以下、デオキシミオグロビンと言う。
また、それに酸素が配位したものをオキシミオグロビンと言う。)

が待っていて放出される酸素を配位子として取り込み、
エネルギーの低い安定なオキシミオグロビンになります。

一連の協奏的酸素分子の移動によってエネルギーが低い安定な状態が実現されます。

オキシミオグロビン中の酸素分子は代謝過程に使われます。

この様に自発過程においては、
エネルギーが高い不安定な状態からエネルギーが低い安定な状態になります。

やっとの思いで酸素分子が体の末端組織に届きました。

 

世界で初めてのヘモグロビン・サーモダイナミックス (11) ヘモグロビンの協同性
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